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世の中にはいろんな人がいる。そしていろんな環境の中にいる。すべての人が同じ瞬間に、拳銃やナイフを突きつけられていたり、笑っていたり、寝ていたり、泣いたり、病気になったりしている。世界で何が起ころうと何も考えずに能天気に暮らしている人、常に何かに警戒して暮らしている人、いろんな人が暮らしている。そして、ここにはここの時間がある。

登場人物:尉火焚 渡(ジョービタキ ワタル)ジョーちゃん、 野川マスター(野川 繁ノガワ シゲル)、百舌 敏(モズ サトシ)ビンちゃん、目白 貴久(メジロ キク)キクさん、関 礼(セキ レイ)レイちゃん

百舌 「ジョーちゃん、さっき奥さんたちの気持ちが分かるって言ってたけど・・・。」

尉火焚 「いや、俺も妻の実家で暮らしてるから、嫁という立場が分かるということだよ。ビンちゃんももしそうすれば分かるよ。」

百舌 「そうかねぇ。一生懸命働いてやっと一息ついたら、離婚して!って言われるんだろ?たまんないね。男はつらいよ。」「♪男と女の間には♪♪深くて暗い川がある~♪なんちゃって。」

結構混んできたのに、何と野川マスターが口をはさんできた。「熟年離婚の理由は、女性が稼げるようになったことと、年金制度が改正されて夫が払った保険料分の厚生年金を夫婦で分配できるようになったこと。旦那の親の介護したくない。とかあるそうよ。」しゃべるだけしゃべって行ってしまった。元新聞記者の義務感か?

尉火焚 「そうだよな!経済的に自立すれば、自由にやりたいことをしたいと思うよね。旦那に手間かからず理解あるとできるけどね。」

百舌 「男は不器用なんだよ。」「何もかもかなぐり捨てて仕事に没頭するのも、不器用だから、あれもこれもうまくできないんだよ。」

「あっ、なるほどなぁ。ビンちゃん良いこと言うな。そいうこともあるかも・・・。」と尉火焚は思ったが。「でも何で不器用な男が働いて、女性を養うというような社会ができたんだろうね?」と意地悪な質問をした。物知りのビンちゃんからどんな回答が返ってくるか、やはり気になる。

百舌 「そんなの知らないよぉー!!!」

目白 「さっ、私はそろそろ帰りますわ。」「では、みなさまお先に。」少し酔った風だが、大丈夫そうだ。

百舌 「きーくさん!またね。」
尉火焚 「またお話したいです。よろしくお願いします。」

目白 「ああ、雨やんだみたいだわよ!」「さようなら。」目白 貴久が帰った。「ありがとうございましたぁ!」野川マスターとレイちゃんがハモってる。

百舌は最初に注文した焼き鳥と中華風野菜炒め(野菜炒めには和風もある。)をまだ持っている。具を種類ごとに分けて少しづつ食べている。串にささった鶏肉は特に好きらしい。自分専用のレインボーペッパー(ブラック・ホワイト・グリーン・ピンク、4種類の胡椒が入っている)ミル付きボトルを持っている。そして、好きな物を一番最後に食べる。変わった食ベ方をする人だ。

百舌 「ジョーちゃんとこのお婆さんはどうなの?」

尉火焚 「うんっ 最初認知症のことよくわからなかったんですよね。」「認知症は、いろんな病気の総称みたい。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、脳血管性認知症、脳腫瘍から起きる場合もあるし、認知症に似た鬱(うつ)やせん妄もあるんですよね。なんかねぇ。いろんなものがあって。でも、血管性でも腫瘍でもないし、アルツハイマーやレビーでもないから、多分寂しくてなったのかなぁ、と思っている。医者はせん妄ではないかと言ってるけど、最近の精神的な病気はもうたくさんあって、何が何だか分からないよ。俺たちが一緒に住むようになって規則正しい生活をするようになったら、少しづつ落ち着いて治ってきているよ。最初はね、急に怒ったり、暴れたりしてね。」

百舌 「じゃぁ 良かったね。それでジョーちゃんもたまに外に出れるんだね?」

「ええっ?」厨房の方で大きな声がした。尉火焚は、またマスターの帽子が取れたのかと思ってすぐさま目をやった。マスターはレイちゃんと何か話している。

「はいっ!生ビールのおかわりですー。」レイちゃんが百舌に持ってきた。

百舌 「あっ この方はジョーちゃんだよ。」

尉火焚 「よろしくね。」自然と笑顔になる尉火焚だった。レイちゃんは、顔の堀が深く、なかなかの美人だ。あっち行ったりこっち来たり、なかなか動きが早い。

百舌 「レイちゃん!さっき何話してたの?マスターがびっくりしてたけど。」

レイちゃん 「ねぇねぇビンちゃん!友達が妊娠したの。」最近の子は気安く話す。

百舌 「えっ?まだ大学生なのに。そりゃ大変だな!どうするの?」

レイちゃん 「うんっ・・・考えてるみたい。でも産むんじゃないかなぁ。大変だけど。」

尉火焚 「ビンちゃんはもうレイちゃんのこと知ってたの?さすがだね。」「目白さんが居なくてよかったね。居たら興奮して大変だったかも。」

百舌 「んっんっんっ。大学生で出産する決断をするのはすごいことだ。相手が気になるなぁ。」

尉火焚 「相手は、びびってるかな?でも~~~考えてみたら、姓を変えて嫁入りしたり、婿入りしたり、面倒くさいことしてるよね。子供生まれて少ししたら、あんなに恥ずかしそうに可愛らしく振舞っていたのが、突然人が変わったように強くなるよね。」
百舌 「ははははは、そりゃそうだよ!生物にとって、一生で一番大切なのは種を存続させるための活動だからね。」「鮭も精子と卵子をうまく受精させるために、傷だらけになって生まれた川を探して上ってオス同士が争いながら、やっと終わったら死んでしまう。昆虫でもそんな感じだね。人間も基本同じだよ。ただ、他の動物と違うそぶりをしてかっこつけてるだけだよ。愛は盲目と言うけど、一生で一番大切な時期に入ると、頭がくるって性行動しか見えなくなるんだよ。」「うぐっんん、うぐっんん ふっ ふっ ふっ。」「気が付いたら、子供がいて、強い女性がいる。」

尉火焚 「目白さんの婿に入った息子さんは、強くなったのかな?」
百舌・尉火焚 「??????????????????」

百舌 「昔のギリシャ神話にアマゾネスという女性だけの戦闘集団がいたっていう話や日本も卑弥呼がいるじゃん。」「女性は強いんだよ。あっそうだよ。染色体はもともと男のY染色体はなかったらしいよ。XとYはいっしょだったらしいんだ。進化の中でY染色体ができたらしいよ。」

尉火焚 「染色体って聞いたことあるけど、どこにあるの?」

百舌 「ジョーちゃ~ん!うぐっんん、うぐっんん。」「一つの細胞の中の核の中だよ。細胞が集まって体ができてるんだよ。染色体の中の方にDNAがあるよ。DNAは分かるよね。」

尉火焚 「遺伝子か!」

百舌 「遺伝子はDNAにある遺伝情報のことだよ。CDの中に納まっている音みたいなものだよ。CDがDNAだと思えばいいよ。」「2本で1対になって22対44本の染色体と女はXX2つ男はXY2つ持ってるよ。男はYだよ。2対になってるのは、突然変異のリスクなんかに備えて、色んな形に変化したり2本が交差したりして組み替えして多様化してるんだよ。だけど男の性染色体Yは極端に短いから組み替えできない。1本さみしく先祖から引き継いだYをそのまま大事に持ってるんだよ。」

尉火焚 「何でY染色体は短いの?」

百舌 「組み替えできないから、有害な物や傷を少しづつ削り取って対処してきたから短くなったんだ。」

尉火焚 「ひぇーーーー!!!」

百舌 「韓国の大学で、朝鮮王朝時代に去勢されて宦官になった人の寿命を調べたそうだよ。王族より長生きしてたそうだ。」「女性が男性より平均寿命が長いのを裏付ける結果になってる。」

レイちゃんが近くに寄ってきて、「何むずかしい話してるの?」と聞いてきた。

尉火焚 「男はつらいよ!って話!」「レイちゃんの友達は何て名前?」

関 礼 「ヒワちゃんって言うの。川の河原に比べる羽で 河原 比羽(カワラ ヒワ)よ。」

百舌 「いい名前だね。女の子が生まれればいいよね。男はつらいからね。」

関 礼 「えぇ???何言ってるの?ーーーねねね!赤ちゃんって、男か女かが分かるのっていつだっけ?」

百舌 「早くて16週目くらいになると病院でエコー検査で分かるよ。でも、6週目頃までは女で、その後もそのまま女かもしれないし、男になるかもしれないってことだよ。」

関 礼 「えぇ???またーー何言ってるの?」

尉火焚 「えぇ?何言ってるの?」ジョーちゃんも真似した。

百舌 「赤ちゃんはね、女として成長するんだよ。6週目くらいまではね。もし、受精の時にY染色体が入り込めてたら6週目になってやっと変化が起きるんだよ。6週から22週くらいの間に母体から大量の男性ホルモンが分泌されるんだ。アンドロゲンシャワーと言われてる。Y染色体の先端にスイッチがついてて、このホルモンを浴びると、男として成長を始めるんだよ。8週目頃には精巣ができて、うぐっんん、うぐっんん、男のものができてくる。」

関 礼 「えぇ???いやーん、本当?」尉火焚 「びっくりぽん!!」

百舌 「男の大事なところの裏に縫い合わせたような跡があるだろ?」

関 礼 「えぇ????分かんない・・・」と言って、レイちゃんはさっと戻っていく。動きが早い。

尉火焚 「えぇ!!!びっくりぽん!!」「う~ん~。女社会になった方がいいかもしれないね!?」

百舌 「そうだねぇ。蟻なんかはメスばっかりだからね。オスは年に一度、女王アリと交わるためだけに生まれてきて、その後すぐに死んでしまうんだ。羽蟻がオスだよ。1億年前から地球で生きてきた先輩として、蟻の社会を見習うべきなのか?」

尉火焚 「いやっ、考えてみたら、それって、男のやっかいな部分みんな削除して、子づくりの時に生まれて仕込んだら死ぬという究極のスリムな社会だね。役割分担を徹底した社会だね。」

百舌 「天然記念物のアマミトゲネズミはY染色体を持ってないそうだよ。どうなってるんかね?人間の男も年取るとY染色体が少なくなってくるそうだよ。哀れ!命短し!」

尉火焚 「そうか・・・なんか今日は疲れたね。事件もあったし、元気なくなるような話もあったし、なんか自信なくなったよ。おあいそ お願いします。」

尉火焚 「えっ?ビンちゃんも帰るの?」

野川マスター 「ありがとうございました。では、愛想尽かしですが・・・」

尉火焚 「何?マスター・・・何のこと?まっいいや。もう疲れた。」と言いながらも笑いながら会計を済ませ店を出た。百舌 敏が後からやってくる。雨はやんでる。でも雨の匂いがする。植物の匂いがする。すると、ベートーヴェンの田園交響曲のフレーズが浮かんできた。朝から穏やかな田園に突如嵐がやってくるが、嵐が去り再び平穏な田園がよみがえるという内容の曲だ。「なんか、今日は色んなシャワー浴びたな!」と思いながら傘を忘れて帰る尉火焚だった。何だか胸騒ぎがした。「ジョーちゃん待ってよ!」百舌が声をかけてきた。

続く(不定期)